天使への手紙
私が暮らす街で子供を認可の保育園に入れるには、母親が就業していなければならない。
もしくは母が出産を控えているとか、育児中か。
それ以外に市が認める特別な理由、それが病気療養中だ。
去年度も1人、精神疾患のお母さんがいた。
このお母さんの病状は深刻で、子供を園に送迎するだけでも大変そうだった。
特に病状がすぐれない時は、パジャマ姿のまま自転車で通園していた。
一昨日のこと。
ナオ太郎(仮名)を園に送りに行った時に、1人の女のコが突然私に話しかけてきた。
「あのね、私のママ、病気なの…」
最近転入してきたその4歳児。
整った顔に見事な巻き毛。
それは大げさな表現ではなく、天使に見える。
「母が病気だ」と訴える天使、その大きな瞳はすでにうるうると濡れている。
「あのね…それでね…ママはお薬飲まないと手が震えちゃうの…」
なんだか病状はシリアスみたいだ。
私は彼女に病名を訪ねてみたが、
「難し過ぎて分からない…」
こ、これは難病なのか?
「それでね、ママね…いろんなことをすぐに忘れちゃうの…。
昨日ね私がもうお風呂に入ったのにね、『入ってない、嘘つき!』って言われたの…」
つたない言葉をたたみかけるように私に訴える天使。
一番信頼し合っていなければならない母親から『ウソツキ』呼ばわりされた彼女のショックを知って、
私はクラクラとめまいを感じた。
と、同時に言いたくもないことを、口にしている母親の苦悩も感じた。
…このコの母親もまた、精神疾患…なのかな?
とその時、一週間ほど前、ナオ太郎が妙なことを言い出したのを思い出した。
「ママー、新しく入ってきたコ、変なんだよ。
すぐに『早く死にたい』って言うんだー」
それって、この目の前の天使のことだ。
彼女の母との生活はそんなに辛いものなのか?
それとも…このコが『死にたい』というのは、母親の口癖を真似ているのか!?
つぶらな瞳で私を見上げる天使を見て、私は決意した。
救わないと。
この不幸な親子に誰かが手を差し伸べないと!
そこで私はウチに帰るとすぐに天使の母宛に、重病の母宛に手紙を書いた。
『病気がしんどいなら、近所だし頼って下さい』
う〜ん、なんか重いな。
『悩みがあるなら相談にのります』
う〜ん、正直いって、自分にそんな度量があるとは…。
何度も何度も書き直して、結局軽めの、
『今度一緒に公園でも行きませんか?』とのお誘い手紙にした。
これに私の電話番号とメルアドを添えて、そっと天使の鞄に忍ばせた。
返事は思ったより早くきた。
だけど私のiPhoneが『メール受信』を表示した時、すぐに天使の母からだとピン! ときた。
そしてそのスピードに彼女もまた、子供と同じく助けを欲しているのを感じた。
ドキドキしながら、クリック。
そこにはやはり天使の母からのメールが…。
そこには…
そこには…
信じられないくらい…
…ピカピカと…
…なんと…
デコメが…
しかも…
ギャル語!

こ、こんな私をヒトは、勘違い大魔王、と呼ぶ…。

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